自然葬マニュアル
(お墓がなくても大丈夫)

自分の骨を自然の中に返す方法

☆Top ☆マニュアル本文 ☆体験談 ☆Q&A ☆場所 ☆トラブル ☆リンク


21世紀は自然葬の時代


■自分の死後、自然葬にして欲しいが方法や手続きが分からない。

■自分の死後、遺骨を自然の中へ帰したいが場所がない。

■遺骨を細かくする道具や具体的な方法について知りたい。

■自分には、入るお墓がない。自分はお墓には入りたくない。

■自分の葬式には、出来るだけお金をかけたくない。



●このような方は、ぜひ本書をお読み下さい●

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環境問題を論じる前に、まず人が自然に還る事


私たちは、一生を通じて膨大な量の自然の恩恵を消費して、

そして最後に死にます。仮に、もしも一人の人間が一生の間に消費する

食料や資源を全部積み上げたら、ビル何階分もの量になる事でしょう。

しかし、逆に「人間が自然の中に帰した自分のもの」と言えば、

炭酸ガスとアカと排泄物ぐらいのものです。



この事実を深く見つめ、自分の心身を一生の間支えてくれた自然への

お礼として「自分の死後には、せめて骨だけでも、大自然に帰したい」

と願う人々が年々急激に増えています。

この小冊子では、その具体的な実例と方法が詳細に書かれています。






個人自然葬のすすめ
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遺族の手で砕骨をして
果物の種と共に大自然の中へ

1998年11月3日。Aさんのリンゴ畑の近くで、 私は母の自然葬(散骨)を行いました。ただ今回は現地にご親切に用意 して下さった部屋で砕骨も遺族である兄と私の手によって行いました。 この高原での散骨では、今までの方々は各自で砕骨を済ませた上 で来訪されていたらしく「現地での砕骨作業は今回が初めての事です」 との事でした。 さて、私は火葬された骨が一体どれぐらいの堅さであるかは知らなかっ たのですが、実際にやってみると、骨のほとんどは手でつぶしても粉に なるぐらいにもろいものでした。 前夜に男ながらに手縫いで縫った厚手の袋に母の骨を入れて、金づちで 叩いては約2mm穴のふるいにかけてを3度ほど繰り返すとほんの40分 ほどで実に美しい粉状になりました。Aさんも「今までに見た粉骨の 中で一番キメが細かいですね」と語ってくれていました。 Aさんと私と兄は、3人とも「こういう心のこもった葬送が一番いい ですね」「いや、でも家族の手でこんなふうにしてもらえるのは運が良 かった場合だよね。だって場合によっては骨すらも見つからない死に方 だってあるわけだし」などと屈託なく談笑しながら、とても楽しく砕骨 をしました。 ところで私の母は食べた果物の種を全部取っておく趣味があったために 自宅には約1キロ以上もの、さくらんぼ、柿、桃、杏、ぶどう、メロン カボチャなどの種がありました。ですから、それを粉骨と一緒に地中に 蒔きました。またA様のご好意で用意をして下さった梅の苗木も一緒 に植林をして戴きました。例年ならば相当に冷え込むはずの高原でした が、文化の日のこの日は、気温も24度で快晴でした。 同年の8月8日に突然の脳内出血で倒れて意識不明となり、そのまま ほとんど苦しむ事もなく、翌日9日に75歳で他界した母でしたが、 生前から「私は、暗い墓の中になんか入るのは嫌だから、 日当たりの良い場所に散骨して欲しい」と、いつも言っていました。 日当たり抜群で、しかも雄大な信州の連山を一望できる高原。 美しく紅葉した山々に囲まれ、リンゴ畑と天然の白樺の木のそばで、 母は自然界の当たり前の法則である「循環と再生」の故郷へと、 静かに、そして穏やかに還って行きました。 自分たちの手で砕骨し、そして、クワを持って畑を耕して散骨したその 作業は通りいっぺんの形式的なお寺の法要などでは、決して体験する ことの出来ない深い充実感と満足感、そして安心感を味わいました。 帰りがけには、地元で一番美味しいと言われるおそば屋さんに寄り、 ごちそうになりました。

今なぜ散骨が注目されているのか?

ところで、散骨というとまるで骨がゴロゴロしているという誤解をして いる人も「稀に」いるようです。しかし実際は『節度ある方法で行う』 という規定がありますから、散骨する粒は形状が3mm以下を目安に砕か れます。沖の『公海』への散骨などでは特に配慮はいりませんが、 他人の私有地の場合にはその土地の人の同意が必要になります。また、 火葬(埋葬)許可証のコピーを土地の所有者に渡すと良いでしょう。 諸外国ではチャーター機で海に撒いたり、あるいはスペースシャトルで の宇宙葬までもが実施されるようです。 ところで散骨(自然葬)は地方や農村では全く必要のないものかもしれ ません。それは農村では畑の中などに先祖代々のお墓があるからです。 ですから、農村などの方には散骨という言葉とその行為には大きな抵抗 がある事が多いようです。つまり散骨と聞くと、何かとても非常識で、 遺骨を冒涜するような行為だと感じる人もいるかもしれません。 しかし、自然葬の需要というものは、圧倒的に都市の人達から生まれた ものです。若い人たちは住宅事情や、時には離婚などにより、これから ますます核家族化が進み、親類とも疎遠となるでしょう。またこの厳し い不況下では若い人達が墓地を購入したり、多額の金額を葬儀にかける のは大変な負担となります。さらには特に都市近郊の墓地開発では深刻 な森林伐採の問題も持ち上がっています。ちなみに、言うまでもない事 ですが粉骨の主成分はリン酸カルシウム他の物質であり、自然には一切 無害なものです。むしろ自然の土壌を豊かにします。 さて、こうした家族関係の変化、不況、環境問題などが重なって、これ からますます自然葬の需要は高まるものと思われます。ですからそんな 未来の世代の人達のために、農業や林業を営まれている皆様には、ぜひ ともご理解を戴き、次の世代の人達に「自然葬の場所」を提供して下さ るよう、心よりお願いいたします。 一番自然な葬送の方法でもあり、かつ自然を守るのが「自然葬」ですが 一方で、こうした心ある行為に利害関係から反感を持ち、法律で禁止し ようとする動きもあります。それは檀家制度で利潤を得ているお寺や、 霊園開発業者、そして葬儀社などです。こうした人の多くは、いつもの ごとく「厚生省の役員が天下り」している墓地関係団体の中にいたり 「お墓コンサルタント学者」と称する人達の中にいます。 これらの人達にとっては皆が個人で自然葬を行うことは全く商売になら ない事だからです。ですから彼らにとって自然葬が広く一般に普及する 事は、大きな死活問題であり、脅威なのです。しかし人間たちは、 一体いつまで「自然環境や個人の自由より自分の商売の利益が優先だ」 などという態度で生きて行くのだろうか・・・・??

葬儀がとことん安く済む
『自然葬ハンドブック』

まず何よりも最初に言っておきたい事は、あなたが誰かの遺骨の自然葬 を行うに当たっては、いかなる種類の市民団体や葬儀社にも自然葬その ものに関しての相談や依頼をする必要は基本的にないという事である。 (むろん遺体の搬送・一時的安置・火葬は葬儀社に依頼した方が良い) 火葬後の骨を細かくして『自然葬』にするという葬儀方法は、 故人本人がそれを望んでいた意志と、その遺族の同意、 そして散骨する土地所有者の許可さえあれば、 誰でも『個人の手で行えるもの』である。 ただし『絶対に注意をすべき点』があるので、以下に簡潔に説明する。 ・・・・・・・・・ ある人が生前から自然葬を望んでいて遺言に書いてあったとしても財産 に関する遺言とは違って、「葬送の方法や遺骨管理の希望」の記述には 明確な法的拘束力がない。平たく言うと、あなたが自分の遺言に、 「私が死んだら自然葬を希望する」と書いてあっても、 その通りに執行しなければならない法的義務は遺族にはないのである。 だから、一番理想的な方法は、常に日ごろから、関係する親族や喪主と なる予定の人との間で、自然葬への完全な同意を得ておくことである。 また「骨を砕く前の遺骨の一部を分けて欲しい」という親族もいるかも しれないので、故人の親族の同意を得たり、希望を聞いておくことには くれぐれも慎重な配慮をして戴きたい。 つまり自然葬にした後になってから、それまで疎遠だった親族などから 「勝手に自然葬にした」などと言う苦情が出ないように『事前の合意』 は完全なものにして欲しい。特にあなたとあなたの知人との間で自然葬 の約束をしていたような場合には(可能ならばだが)自然葬を予定して いる人の家族の同意を必ず得て欲しい。 ただし何も親族からの同意書の返送が絶対に必要なのではない。例えば 「私は死後●●さんの手によって▲▲の場所に自然葬にされる事を希望 します。なお本書面の到着より15日以内に異議の申し立てがない場合 には、私の遺骨の自然葬の実施に同意したものと見なします」と書いた 文面を親族などに「書留」で送るのも、ひとつの方法である。 離婚やその他のいろいろな事情で、疎遠になったり絶縁状態にある自分 の家族などに連絡を取りたくない場合には、この方法が良いだろう。 また、いつ誰によって、どこに散骨されたのかという記録が明確である 事が親族から求められる場合もある。 私の場合には、事前に故人の親族の合意を得ておき、散骨の実施後には 現場で撮影した写真と報告の手紙を親族の人達に送った。 ********* さて、以下は「一例」としてだが、葬送を簡潔に済ませる方法である。

お金をかけたくない場合の葬儀方法
◆死亡当日から自然葬までの全プロセス◆

誰かが自宅その他で死亡しているのが発見されたり、どこかで倒れれば 多くの場合は「病院」に運ばれる。その場合には病院から死亡診 断書が遺族や親近者に渡される。この用紙を、死亡から7日以内に 役所に持っていって、死亡届を出さなければならない。 だが、ここでまず何よりも真っ先にやらなければならない事は、 役所に行くことでもなければ、葬儀社を手配する事でもない。 もしも故人が金融機関などに貯蓄があり、たとえばそれを「葬儀の費用 に当てて欲しい」という故人の生前からの希望があった場合などには、 すぐに金融機関の契約を解約するか 葬儀に必要な金額を引き出す事。 そうしないと、故人の死亡を金融機関に確認された後では、 現金を引き出す手続きがやや面倒になり、すぐには引き出せなくなる。 この為には自然葬を実施する予定の人は、故人の生前から、あらかじめ カードの暗証番号や通帳や印鑑の場所を教えてもらっておく事だ。 したがって家族の場合にはあまり問題はないが、知人などに葬儀を依頼 する場合には、出来るだけ信頼関係が確かな人物にしたほうがよい。 ・・・・・・・・・ 次にやる事が葬儀社の手配である。私のように通夜も本葬 も行わないという場合には、病院の安置室から直接に火葬場に運ぶよう になるので、その事を葬儀社の人に必ず事前に説明しておく。 ただし法律により遺体は死亡時刻から24時間以内には火葬出来ない。 そこで、火葬場では通常は安置設備があるので、そこに保存を 頼めば、翌日まで低温保管してくれる。費用は火葬費用とは別途で、 約7500円前後である。 遺体は病院から自分で車で運んでもいいのだが、火葬場までの運搬は、 やはり葬儀社に頼んで、ちゃんとお棺にいれて運んでもらった方が良い だろう。通夜・本葬をせず、祭壇を一切作らないにしても、いくらなん でも、お棺に入れる・・運送する・・保管する・・火葬する・・骨上げ ・・骨壷に収める、といった作業などは最低限必要になるからである。 私の場合は、 お棺=     70000円         普通霊柩車=  10080円 骨壷(3号)=  9400円 火葬料(上等)=36000円(中等ランクもある) 付添人件費=  38000円(心付けを含む) 霊安室安置=   7500円 葬儀・祭壇・写真なし=   0円(注)      消費税込み合計  175829円であった。 (注)葬儀をする場合は約8万5千円から20万まで3種類がある。 (1998年8月/某社による区民葬/東京町屋の火葬場にて) ところで、市民葬や区民葬を予定している時には葬儀社 に電話をした時に市・区民葬を行っているかどうかを確認する。 葬儀社によっては、市区民葬を扱わないところもあるからだ。そして、 やっていたらば市区民葬である事も事前に葬儀社に言っておく。 ・・・・・・・・・ さて次に病院で貰った死亡診断書を区役所の戸籍係に持って行き死亡届の記入と同時に、死体火葬許可証申請 書にも記入をする。すると火葬許可証が渡される。 なおもしも葬儀を安くしたい場合にはその時に区役所の窓口で「区民葬 を希望する」と言えば『区民葬券』の申し込み書類をくれる。 これがないと葬儀社で区民葬に出来ないので必ずもらって記入すること である。そして区民葬券と火葬許可証を葬儀社の人に渡すのである。 葬儀社に、いつ費用を清算して手渡したらいいのかは、頃合いを見て、 葬儀社の付き添い人に聞いて、その指示に従えばよいだろう。 なお、区民葬の費用の明細の中には、志もすでに含まれているので、 付き添いの方や霊柩車の運転手の方には、志を渡す必要はない。 ・・・・・・・・・ ところで火葬許可証を葬儀社に提出するのは、火葬するまでに間に合え ばいい。というのも故人の死亡時間や死亡場所等によっては急には役所 に行けない事もあるので、そういう場合には翌日の朝一番に金融機関を 解約して現金を引き出したその足で役所の戸籍係へ行けば良い。ただし 死亡届は全国どこの役所でも可能で、休日も24時間受け付けている。 だから、もしも旅先などで万一の事があっても、わざわざ故人が住んで いた市区町村の役所にまで行く必要はない。 ・・・・・・・・・ さて、いよいよ安置室から出された遺体の入ったお棺の中に遺族の手で 花や、故人の持ち物や、好きだった食べ物などを入れてもよい。 ただし鉱物や陶器や金属などの他、高温でも燃焼しきらない素材のもの は入れられない。革靴などは金属部分がなければ、大丈夫である。 さて火葬が終わるまで、約1時間ほどは火葬場の中にあるラウンジ や近辺の喫茶店などで、他の親族と共にすごすことになるだろう。 そして、火葬が終わると骨を拾う作業がある。火葬場の人が、 丁寧に拾い方を教えてくれるので、それに従えばよい。 火葬された骨は骨壷に収められ、木箱に入れられて、 その上から布を被せられてから、喪主に手渡される。 この時に、葬儀社に提出した火葬許可証に、火葬場で裏書きがされて、 そのまま火葬(埋葬)許可証となった書類がその木箱 に一緒に入れられるか、または別に手渡される。 これをいったん、自宅へ持ち帰る。あなたと故人さえ良ければ、 自宅でそのまま保存してもなんら問題はないのではあるが・・・。 ********* さて『自然葬の作業』はここから始まるのである。 理想的には、故人の生前に、誰の手で砕骨をして、どこの土地に撒くか すべての段取りが合意の上で決まっている事である。 しかしそれが決まっていなかった場合には、親類、知人、あなたか故人 が所属していたサークルなど、又は最近ではインターネットの掲示板や Eメールなどで、散骨を許可してもらえる個人所有の山林や、農地、庭 などを探さねばならない。 そして、その土地の所有者の許可が得られて、そこに散骨できるのが、 一番理想的ではある。この場合は土地の所有者に埋葬許可証 のコピーを渡すと良い。 また、故人とあなたがどういう関係であったかを、散骨する土地所有者 に明確にしておくのも良い。特に必要はないが、もしこうした事を厳密 にする必要がある場合は、あなたが故人の家族であった 場合には故人との関係を示す戸籍謄本除籍謄本 のコピーを散骨する土地の所有者に渡しておくと良いだろう。 また、あなたが故人の知人であった場合には、あなた の住民票や健康保険や免許書のコピーなど このいずれかひとつでいいのであなたの身元証明が出来るものを、 散骨する土地の所有者に渡しておくと良いだろう。 ・・・・・・・・・ さて散骨場所が確保できたら、骨を砕く砕骨作業である。 これは、もしも近所に迷惑にならないならば、自宅で行っても良い。 クッションの上にレンガや、大きめの平たい石を置き、 その上に骨を入れた厚手の袋を置いて布の上から金づちで丁寧に叩く。 そして、中身を出してふるいにかけ、ふるいから落ちなかった分 をまた袋に戻して、骨の全部を丁寧に砕いてゆく事を繰り返す。 そして、必ず全部がふるいを通過するまでやると良い。ふるいは、 透き間が2ミリから3ミリ程度が良い。 故人の健康状態や年齢や治療薬などの摂取状態にもよるが、火葬された 骨は意外にもろくて、手で潰しても粉になってしまうものも多い。 ・・・・・・・・・ こうして見事にきれいに細かくなった骨粉を一般に「遺灰」と言うが、 この遺灰を撒くことには、現在の日本では法的な規制はない。 骨と分かる大きさや形状の骨が野山や海に撒かれることは問題があるが 一辺が約3ミリ以下になった骨粉は、周囲の人達の感情を配慮して、 「節度ある方法」で散骨すれば何も問題はない。 私の場合には、散骨する土地の所有者はむろんの事、近辺の農村の方も 暖かく理解をしてくれていた土地なので、何も問題はなかった。 しかし、たとえば、土地所有者は散骨に同意をしてくれていても、 どうしても近辺の住人が嫌がるという場合には、 「何も断らずに、黙って静かに行えば良い」のである。 ここで気をつける事は、もしもこうしたケースの場合には、喪服を来た 遺族が、いかにも「散骨してます」というようにゾロゾロと歩いたり 読経・香を焚く・その他の『目立つような葬送儀式』をしない事だ。 ようは農地でも、山林でも個人の庭でも、もしも周辺住民の理解がない 場合には完全な『お忍び』でやるのが原則である。 しかしもし堂々とやりたいならば、その土地の周辺の住民が同意をして くれている所が好ましい。私が行った場所はその一例である。 「節度ある方法でしろ」というのは、要するに他人が散骨作業の現場や その痕跡を後で見て知った場合にのみ発生するだけの極めて『主観的で 感情的・心情的な問題』にすぎない。(散灰自体は全くの合法である) だから公開する「何か特別な目的(取材等)」でもないかぎりは、 慎ましく、ひっそりと行えばいいのである。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・

★こんなに素晴らしい自然葬のバリエーション★

したがって、本当に完全に誰の目にも触れなければ、あなたが海水浴や 釣りに行った時にそっと水中に故人の遺灰を葬ってもいいわけである。 見た事もあるだろうが海上での散灰は今までわりと派手に撒いていた。 しかし、そんなふうにバラバラとは撒かず、水に溶ける無害な紙に包み そっと水中に手放せば、多少人のいる川や海でも目立たないのである。 また骨粉は水に沈むので、水槽に魚を飼っている人は水槽のサンゴなど に交ぜてもいいだろう。故人は魚たちの体の一部となるのである。 また自宅でガーデニングをやっている人は庭の地中や鉢植えの中に骨粉 をまぜても良い。そうすれば故人の一部が花となり木となるのである。 さらにオシャレで、なんとも雄大な方法に「間接鳥葬」がある。 言うまでもなく日本では本格的な鳥葬(鳥に死体を食べさせる葬儀)は 出来ない。そこで米粉などの穀類に骨粉を練り込み、小さいダンゴ状に して野鳥にあげるのだ。こうすれば故人は空を飛ぶ鳥の一部になる。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ くれぐれも気をつける事は『自然葬に理解のない場所』では散骨 の行為や痕跡が人目につかない事、 そして私有地では許可を取る事だ。この最も重要 な原則を無視して、散骨に対する世間のイメージや認識をダウンさせる ような事をすれば法律で規制される可能性もなくはないからである。 だから個人の私有地に無断で撒いたり、公園や公園の池などに撒くのは NGである。たとえば、自然葬に大賛成しているそのあなただって もしも自分の土地や、行きつけの公園に、全く見知らぬ人間の遺灰が、 いつのまにか撒かれたと知ったらば、いい気分にはならないだろう。 結局は一番良いのは、誰かのツテで知人の土地 を利用させてもらう事である。 この時に「散骨というのは、おおよそゴマ粒以下の小ささになった骨粉 を地表または地中や水中に撒くのであり骨の形などは全く痕跡がない」 という事は、くれぐれも土地の所有者には説明しておいた方がよい。

その他の手続き

なお、以下のいろいろな手続きは、火葬して、骨壷をいったん自宅など に持ち帰ってからでよい。 1)まず故人が属していた市区町村役場の「国民健康保険課」に行く。 すると、葬祭費が支給される。私の場合は70000円であった。この 時に必要になる提出書類などは親切に教えてくれるのであらかじめ電話 で聞いておいて、書類を用意してから窓口に行くと良い。 2)さらにもし故人が年金に加入していた場合にも届け出が必要。また 年金を受け取っていた場合は、年金証書を返却する。また年金の未払い 分などがあると、数カ月後に身内等に支給されるが、もしあなたが故人 の身内である場合には、故人とあなたの関係を示す住民票や戸籍謄本が 必要になる。これらの手続きは国民年金課の窓口で行う。 3)さらにあなたが故人の知人で同居していた場合 などには、公共料金や家賃も、場合によっては名義変更が必要な場合も 出てくる。 4)その他にも、もしもあなたが故人の喪主や相続人となる可能性があ る場合には、その人が交通災害共済その他などに加入していないか、 ローンの返済義務やクレジットカードや保険はどうなっているかなどを 生前からあらかじめ明確に知っておく必要がある。

あなたが死亡した時に誰も
葬儀をしてくれる人がいない場合

もしもあなたの遺体の引き取り手が見つからない場合には、結果的には 病院や老人ホームの院長が死亡届を出し、市区町村にて事務的に処理さ れて、最終的には霊園の一角の合同塚に納骨されることになる。 しかし自殺でもないかぎりは、事故の場合は免許証やクレジットカード その他何かしらを持っているので、たいていの場合は身元が判明する。 するといくら疎遠な家族でも引き取り手として呼ばれて、その親族の手 で火葬・埋葬される可能性はある。つまり、無縁墓地に入るのすらも、 けっこう難しいのが現代社会の情報システムなのである。 ・・・・・・・・・ しかし本当に天涯孤独、または親類や知人との縁がない場合は、 仮に遺骨の引き取り手(つまり散骨をしてくれる人)がいても、 故人の「葬儀をとり行う人物がいない」という事になる。 すると役所では「死亡届の届け出人が不在」の扱いになってしまう。 この場合は、必然的に前述したように無縁仏扱いとなってしまう。 「誰も死亡届も出せず、葬儀の喪主もいない」という、このケースは、 現時点では、それを代行してくれる葬儀社というのは存在しない。 だから散骨をしてくれる団体や個人に、そこまで代行してもらう依頼が 出来ない場合には、あなたは無縁墓地に入ることにならざるを得ない。 しかし、やり方によっては俗に言う『便利屋さん』に葬儀に出席しても らう事や死亡届も可能かもしれないので、もし本気で関心があったら問 い合わせてみると良い。その場合には知人の場合と同じように葬儀費の 支払や遺骨の郵送先について、しっかりと相談しておく必要がある。 さて運よく、便利屋などの人に役所の手続きや葬儀への出席までの依頼 が出来た場合でも、次に問題なのが火葬した骨の送り先である。 これに関しては日本国内で自然葬を行う団体がいくつかあるので、 そうしたところとあらかじめ生前契約をしておく事だ。 そうすれば、火葬した遺骨を引き取って自然葬をしてくれる。 ちなみに、一例にすぎないが、費用はおおよそ次のようになる。 山または海への合同葬=13万 海または山への個人葬=33万 空からの散骨の個人葬=40万 ※なおこの金額の中には団体への基金の最低金額(3万)も含まれる。 (以上は一例として『某団体』1998年の場合。) だからこうした団体を調べて見つけ、生前契約の為の契約書を作成し、 あらかじめ契約と支払いを済ませておけば問題はない。 団体によって契約金は異なるので、詳細は実際に電話で聞いたり、 連絡してからその事務所に行って、しっかりと相談するのが一番良い

絶対に必要な遺言メモ

自分が死亡した場合に「真っ先に連絡が行く必要のある人」とは、 たとえば、あなたの家族や、たとえ知人であってもあなたの葬儀の喪主 となる予定の人、または自然葬をするための手配をする人などである。 こうした最優先で連絡がされなければならない人の連絡先を明瞭な文字 で書いたメモを肌身離さずに持ち歩くことが必要である。またこのメモ は最悪のケースを想定して耐水性のインクで書き、ビニール袋にパック すると良い。つまり万一にも水難事故や事故の出血で文字がにじまない 為にである。(火事や爆発の場合は無駄になる可能性もあるが。) そして「自然葬も区民葬も一切何もしたくない」という場合は『献体』 という方法があるので『白菊会』というところに問い合わせる事だ。 但し親族の同意書が必要であり骨も2年前後で返却される事が多い

お わ り に

さて、最後にひとことだけ、言っておきたいことがある。それは、 自然葬とは、別に『正しいもの』なのではない、という事だ。 だから私は環境問題などに便乗して自然葬の正当性など主張するつもり は毛頭ない。環境を破壊したのも人間のエゴである以上は、しょせん、 エコロジーブームも人間のエゴの産物にすぎないと私は思っている。 あえて今回ここで自然葬を取り上げたのは、家族と疎遠だったり経済的 に余裕のない人達や、自分の実家の墓に入りたくない人や、自然回帰が 好きな人たちの為の葬儀方法を模索してみよう思ったからである。 ただし自然葬は、数ある葬送方法の中の「ひとつの方法」にすぎない。 だから、伝統的な埋葬や、派手な葬式が好きな人は自由にやれば良いし 自然葬が好きな人は散骨をすれば良いだけの話である。さらには、 自然葬というのは、葬儀を「安く、簡潔にする」という意味ではない。 それは、あくまでも『遺骨の扱い方』に関する呼び名である。だから 葬儀は普通通りに寺で行い、その後で散骨するという人も沢山もいる。 また、全部を散骨するのではなく骨の一部を納骨したり家族で分骨して 残った一部を散骨する人も多い。(私の母の骨はそうしました。) こうした事は『食べ物の好み』と同じで、これは『個人の好みの問題』 であって倫理的な是非の問題ではないし、また、民族学やら宗教学の話 などは、自然葬の論議に持ち込むべきではないのである。 ・・・・・・・・・ ただし、何度も本文中で警告をしたように、散骨では最低限のマナーと 気配りがないと、散骨を嫌う人のひんしゅくをかってしまう事になる。 そうなれば将来、散骨という方法は、全面禁止される事はないにしても 場所などに、ある程度の法律的な規制や、有料化される恐れもある。 だから個人で散骨をする人は、くれぐれもケースバイケースでその故人 を取り巻く状況や、散骨する場所をよく考慮して本書に書かれた注意点 を守って行って欲しい。 ・・・・・・・・・ なお、もしも団体組織に依頼する場合には、前述したように数十万円の 費用がかかります。ただし私もAさんも、その会の会員ではありません。 自然葬ではなく献体の場合=『白菊会』03−3827−5131 ****************** 結語として言いたいのは、葬儀社・寺・霊園も『自然葬』をメニューに 組み込まなければ生き残れない時代が、すぐそこまで来ている事だ。 それでは・・・将来「必ずやってくる」皆様の自由で明るい『葬送』を 「自分自身の思う通りに演出」してみて下さい。 1998 11/7 鈴木方斬 THE END


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監修・執筆:鈴木方斬(すずきほうざん)

HP開設者:黒間玄元(くろまのりゆき)
ハンドルネーム:bv




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